こんにちは。
一般社団法人カリエーレ・コムサ
キャリアコンサルタントの佐渡治彦です。
前職が1年、そして今の仕事が6ヶ月で契約更新されず、短期間で辞めざるを得なくなったつらい経験をした相談者がいました。
短期間での離職が続くと、働くことへの自信をなくしてしまう気持ち、痛いほどよくわかります。
希望を持って入社したのに、思うような結果を出せない現実が、心に深い傷を残していることでしょう。
「自分はダメなんだ」「長く働くなんて無理だ」と、自分自身を責めているかもしれません。
しかし、決して、安易な気持ちで仕事をしていたわけでないでしょう。
何とか、続けられるよう努力したが、結果的に会社に認められなかった。
キャリアコンサルタントとして、数多くの転職者を見てきましたが、短期間での離職を繰り返してしまう人には、共通するいくつかの傾向が見られます。
そして、その傾向を克服し、次のキャリアを確実に築いていくための、たった一つのシンプルな習慣があるのです。
それは、「過去の経験を、冷静な『反省』と、未来を創るための『データ』として徹底的に活用する」という習慣です。

離職の背景にあるもの:冷静な自己理解
短期間の離職には、本人の努力や反省が必要な点と、そうでない点が混在しています。
感情的にならず、客観的に自分自身と向き合ってみましょう。
1. 環境とのミスマッチ
これは、あなたの努力だけではどうにもならない点です。
どんなに優秀な人でも、人間関係や企業文化、仕事の進め方など、職場との相性が悪ければ、力を発揮することはできません。
それは、あなたのせいではなく、そもそも「縁がなかった」だけのことです。
2. 本人にも反省すべき点
一方で、次のような点に心当たりはないでしょうか。
- 自己理解の不足:
「やりたいこと」という漠然としたイメージだけで仕事を選び、「どんな働き方なら、自分は力を発揮できるか」という軸が曖昧だった。 - 環境適応への努力不足:
新しい職場のルールや文化を理解しようとせず、自分のやり方に固執してしまった。
困った時に、周囲に助けを求めることをためらってしまった。 - 焦りからくる選択ミス:
「早く就職しなければ」という焦りから、十分に企業を吟味せずに決めてしまった。
これらの反省点を冷静に受け止めることは、次に同じ過ちを繰り返さないために不可欠です。
しかし、これらは「あなたがダメな人間」だという証明ではありません。
ただ、過去の選択が、あなたの求める結果につながらなかったという事実を示しているだけです。
再出発の鍵:3つのステップ
過去を教訓として、これからの活動にどうつなげていくか。
これからお話しする3つのステップは、あなた自身の力で、あなたの未来を切り拓くためのものです。
ステップ1:
自分の「できること」と「できないこと」を冷静に見つめる
まずは、感情を脇に置き、紙とペンを用意して、これまでの経験を客観的に書き出してみましょう。
1. 「できなかったこと」をリストアップする
- 〇〇という業務のスピードが周囲より遅かった。
- チームメンバーと〇〇についてうまく連携が取れなかった。
- 上司から求められる〇〇という成果を出せなかった。
2. 「できたこと」をリストアップする
- 〇〇という作業は、正確かつ迅速に行うことができた。
- 〇〇という新しいシステムや知識は、短期間で習得できた。
- 〇〇という場面では、同僚から感謝された。
3. 「できないこと」を「努力で変えられるか」で分類する
リストアップした「できないこと」を、さらに2つに分類します。
- 努力で変えられること(スキル・知識):
「〇〇という業務のスピードが遅い」→練習すれば改善できる可能性がある - 努力しても変えにくいこと(適性・価値観):
「単調な作業の繰り返しにどうしても集中できない」「ノルマ達成のために競争する環境が合わない」→これらはあなたの本質的な適性や価値観に深く関わるため、無理に変えようとすると苦痛が伴う
この作業を通じて、あなたは自分が本当に苦痛を感じるのはどこか、そしてどこに努力を注ぐべきかを明確に理解することができます。
ステップ2:
反省点から「OK条件」と「NGリスト」を作成する
ステップ1で見えた「できること」と「できないこと」を元に、今後のキャリアの軸となる「OK条件」と「NGリスト」を作成します。
- NGリスト(避けるべきこと):
- 「競争が激しい環境」
- 「個人の成果が厳しく評価される仕事」
- 「単調で集中力を要する作業の繰り返し」
- OK条件(求めるべきこと):
- 「チームで協力して進めるプロジェクト」
- 「マニュアルに沿った正確性が求められる事務作業」
- 「多様な業務に携わり、新しい知識を学ぶ機会がある仕事」
このように、感情を交えずに「自分はどんな環境で、どんな働き方なら、最大限の力を発揮できるか」という軸を定めることが重要です。
ステップ3:
面接の場を「相性診断の場」と捉える
「なぜ、短期間で離職しているのか?」という事実は、次の面接で必ず聞かれるでしょう。
しかし、これはあなたを責めるための質問ではありません。
企業側も「なぜ短期間で離職したのか」を理解し、自社との相性を判断したいと考えています。
- NGな回答: 「私が〇〇ができなかったからです」と、自分を一方的に責める回答。
- OKな回答(例): 「前職では、〇〇という業務の難しさに直面し、自分のスキル不足を痛感しました。一方で、〇〇という作業にはやりがいを感じ、正確にこなすことができました。
- この経験から、私にはチームで協力しながら、〇〇のような強みを活かせる仕事が向いていると改めて気づき、貴社を志望いたしました。」
このように、「できないこと」を冷静に認めつつ、「できたこと」に焦点を当てて話すことで、あなたの自己分析力と成長意欲が伝わります。
面接の場は、あなたからの一方的なアピールだけでなく、企業があなたの「OK条件」に合致しているかを見極める場でもあるのです。

最後に。
あなたの未来を拓く、クロンボルツの5つの心構え
最後に、あなたが再び歩き出すための羅針盤として、スタンフォード大学のジョン・D・クロンボルツ教授が提唱した、不確実な時代を生き抜くためのキャリアの考え方をご紹介します。
これらは、あなたの過去の経験を未来に活かすための、強力な心構えとなるでしょう。
- 好奇心(Curiosity): 「なぜだろう?」という好奇心を持つことで、予期せぬ出来事の中にも、新しい仕事や学びのヒントを見つけ出せます。
- 持続性(Persistence): 失敗しても諦めずに、努力し続けること。うまくいかなかった経験は、次の成功につながる大切なデータです。
- 柔軟性(Flexibility): こだわりすぎず、臨機応変に考えること。想定外の出来事を、新しいチャンスと捉える柔軟性を持ちましょう。
- 楽観性(Optimism): 物事を前向きに捉えること。自分は必ずうまくいくと信じ、積極的に行動することで、幸運を引き寄せることができます。
- 冒険心(Risk Taking): 挑戦を恐れないこと。失敗を恐れて何も行動しないより、少しでも挑戦してみる勇気を持ちましょう。
まずは、これまでの経験で、自分の「できること」と「できないこと」の自己理解をしてみましょう。
それは、多くの人が気づいていない、あなたのキャリアにおける大きな強みです。
この経験は、無駄な回り道ではなく、あなたの未来を拓くための大切な道しるべです。
焦らず、一歩ずつ、あなたのペースで歩みを進めていってください。
自己理解をしっかりして、次へ進み、自信を持って働けるよう応援します。
一人でモヤモヤするときは、キャリアコンサルタントに相談してみてはどうでしょうか?
何かヒントが見つかるかもしれませんよ。

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