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キャリアコンサルティングの有用度及びニーズに関する調査

こんにちは。
一般社団法人カリエーレ・コムサ、キャリアコンサルタント佐渡治彦です。

独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)が2025年3月25日「キャリアコンサルティングの有用度及びニーズに関する調査」を発表しました。

本報告書は、キャリアコンサルティングの有用性とニーズに関する広範な調査結果を分析し、その意義を明らかにしています。
特に、現代の労働市場における重要な課題であるリスキリングの推進とワーク・エンゲイジメントの向上という観点から、キャリアコンサルティングの潜在的な貢献について考察します。

執筆担当者は、「社会正義のキャリア支援」を提唱する「キャリアコンサルティング理論と実際」の著者である労働政策研究・研修機構 統括研究員・
下村 英雄氏です。


以下、報告書の要約を述べます。

調査概要

  • 目的: キャリアコンサルティングの有用性と、労働者・非労働者のキャリアに関するニーズを多角的に把握する。
  • 対象: 20~50代の男女11,820名(就労者9,900名、非就労者1,920名)
  • 方法: インターネット調査
  • 時期: 2023年8月

主な調査結果と示唆

  1. キャリアコンサルティング経験者の変化と有用性:
    • 約6割が相談によってキャリアや職業生活に何らかの変化があったと回答しており、具体的な変化としては「将来のことがはっきりした」「就職できた」「仕事を変わった」などが挙げられています。
    • 約5割が相談を「とても役立った」「やや役立った」と評価しており、キャリアコンサルティングが個人のキャリア形成において一定の有効性を持つことが示唆されます。
    • この結果は、キャリアコンサルティングが個人のキャリアに対する意識変容や具体的な行動を促し、結果としてリスキリングへの動機づけや、より主体的なキャリア選択につながる可能性を示唆しています。
  2. キャリア相談経験と満足度:
    • キャリアコンサルタントのような専門家への相談経験者は、そうでない人と比較して、その後の職業生活やキャリアに対する満足度が高い傾向にあります。
    • これは、専門的なキャリア支援が、個人のキャリアに対する納得感や充実感を生み出し、結果としてワーク・エンゲイジメントの向上に寄与する可能性を示唆しています。
  3. 今後の利用意向:
    • キャリアコンサルティング経験者の約5割、未経験者の約15%が、今後もキャリアコンサルティングを利用したいと考えています。
    • このニーズの高さは、キャリアコンサルティングが、労働者のキャリア形成における継続的なサポートを必要とされていることを示唆しています。変化の激しい社会においては、定期的なキャリアの見直しや新たなスキル習得の必要性が高まっており、キャリアコンサルティングがそのニーズに応えることが期待されます。

労働政策研究報告書No.233「キャリアコンサルティングの有用度及びニーズに関する調査」|労働政策研究・研修機構(JILPT)

リスキリング推進への貢献

キャリアコンサルティングは、個人のリスキリングを以下の点で支援する可能性があります。

  • キャリア目標の明確化:
    相談を通じて、個人のキャリア目標や将来の展望を明確にすることで、必要なスキルや知識を特定し、リスキリングの方向性を定めることができます。
  • 学習意欲の喚起:
    キャリアに関する不安や課題を解消し、主体的なキャリア形成の意識を高めることで、新たな学習へのモチベーションを高めることができます。
  • 情報提供と計画策定:
    必要な学習機会や支援制度に関する情報を提供し、個人の状況に合わせた具体的なリスキリング計画の策定を支援します。
  • キャリアトランジションの支援:
    リスキリングによって新たな職種や役割への移行を検討する際に、必要な準備や心構え、具体的な行動計画をサポートします。

ワーク・エンゲイジメント向上への貢献

キャリアコンサルティングは、個人のワーク・エンゲイジメントを以下の点で高める可能性があります。

  • 自己理解の深化:
    自身の強みや価値観、興味関心を深く理解することで、仕事に対する主体性や意欲を高めることができます。
  • キャリア満足度の向上:
    キャリアに関する悩みや不安を解消し、納得のいくキャリア選択やキャリアプランニングを行うことで、仕事への満足度を高めることができます。
  • 組織との適合性の向上:
    自身のキャリア目標や価値観と組織の方向性や文化との適合性を認識し、より主体的に組織に貢献しようとする意識を高めることができます。
  • 成長実感の醸成:
    キャリアコンサルティングを通じて、自身の成長やキャリアの進展を実感することで、仕事に対する意欲や達成感を高めることができます。

今後のキャリアコンサルタントの役割(リスキリング、ワーク・エンゲイジメント視点)

調査結果と上記の考察を踏まえ、今後のキャリアコンサルタントは、リスキリング推進とワーク・エンゲイジメント向上に貢献するために、以下のような役割をより一層強化していく必要があります。

  1. リスキリング支援の専門家:
    • 労働市場の動向や将来のスキルニーズに関する深い知識を持ち、個々のキャリア目標や適性に合わせて、最適なリスキリングプランを提案できる専門性。
    • 多様な学習方法や支援制度に関する情報提供能力、学習継続のためのモチベーション維持支援。
    • 企業内におけるリスキリングプログラムの開発や導入支援。
  2. ワーク・エンゲイジメント向上の促進者:
    • 個人の価値観やキャリア志向を深く理解し、仕事への意味づけや主体的な取り組みを支援するカウンセリングスキル。
    • 組織文化や風土を踏まえ、個人の能力を最大限に発揮できるようなキャリア開発の支援。
    • 従業員のキャリアに関する課題を早期に発見し、適切な介入を行う予防的なアプローチ。
  3. 変化に対応できるキャリア支援:
    • 技術革新や社会情勢の変化を常に把握し、新しい働き方やキャリアの可能性を示唆できる情報提供力。
    • 多様なバックグラウンドを持つ人々への包括的なキャリア支援。
    • オンライン技術を活用した柔軟な相談体制の構築。
  4. 企業との連携強化:
    • 企業の経営戦略や人材育成方針を理解し、組織全体の活性化に貢献するキャリア支援プログラムの共同開発。
    • 従業員のキャリア自律を促進する企業文化の醸成支援。
  5. 社会全体のキャリア意識向上:
    • キャリアコンサルティングの意義や効果を広く社会に啓発し、キャリア形成に対する意識を高める活動。
    • 教育機関や地域社会との連携を通じて、生涯にわたるキャリア形成支援のネットワーク構築。

まとめ


結論として、労働政策研究報告書No.233の調査結果は、キャリアコンサルティングが個人のキャリア形成において重要な役割を果たし、リスキリングの推進やワーク・エンゲイジメントの向上にも貢献する可能性を示唆しています。
今後のキャリアコンサルタントは、これらの社会的な要請に応えるべく、より専門性を高め、多様な関係者との連携を強化していくことが求められます。
現在、キャリアコンサルタントは約8万人登録者がいるそうです。
企業領域、需給調整機関領域、学校領域など各々のキャリアコンサルタントが得意とする領域で、活躍していくことが期待されます。

特に企業領域でセルフ・キャリアドック制度をいかに普及していくがは、企業の活性化、従業員各々が主体的に働き、生産性を向上していくために重要な課題だと思います。

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