こんにちは。
カリエーレ・コンサルタンツ、キャリアコンサルタント佐渡治彦です。
今回も引き続き社会正義のキャリアコンサルティングのアメリカにおける第一人者、ブルースティンの考え方について述べます。
ブルースティンは、前回ご紹介した「忘れられた半分の声」の研究をさらに発展させ「ワーキング心理学」を主張しています。
「ワーキング心理学」は、人の生涯にわたる「キャリア」という概念を批判して、むしろ、日々、人々が行っている「ワーク」を重視しました。
「ワーク」、従来の「キャリア理論」で言われる、自分の興味、希望、価値観で自由にキャリアを選択できる人は一握りであると考え、みながみな、自分で組み立てていくキャリアを重視しているわけではないと述べています。その上で、「ワーク」の唱える「ワーキング心理学」は、人々が行っている「ワーク」を人の生活で最も中心的なものと捉えました。
「ワーク」の機能は3つあるとブルースティンは、述べます。
★生存と力の手段としてのワーク
これは、食物、水、服、安全、住居のためのワークです。
マズローの欲求5段階説の生理的欲求、安全の欲求、所属と愛の欲求、承認欲求、自己実現欲求の下位にあたる欲求に近い生存の欲求です。ブルースティンは、ここに経済的、心理的、社会的な「力」を含めます。
「力」が無ければ、生存の欲求は満たされないという意味です。
★社会的手段としてのワーク
仕事を通じて人と繋がる。
職場に助け合う風土があれば、人は気持ちよく働くことが出来る。人は、ワークによって人や社会、世界と繋がることができるという考えです。
更に、ブルースティンは仕事を通じた人との関係こそが、人が仕事をする際の重要なアイデンティティ、自分を表現する土台になると述べています。この考え方は、人間関係を大切にする日本人には受け入れやすいでしょう。
★自己決定の手段としてのワーク
ブルースティンは、自己決定の手段としてのワークを最も重視します。
何かに強制されたり、抑圧されたり、隷属されることなく自分の進路を自分で決めること、「職業選択の自由」つまり「自由」を保障しています。しかし、ブルースティンの自己決定の手段としてのワークの考え方は、アンビバレント(両義的)です。
良い面もあり悪い面もあるという意味です。つまり、自分で自分の進路を決められることは、最高に良いことでありますが、それが出来ない人がいる。
前回のブログで述べた「忘れられた半分の声」を忘れてはならないとブルースティンは論じます。
その人たちは、ワークを「生存と力の手段としてのワーク」、「社会的手段としてのワーク」としか捉えられない人たちがいる現実を直視せよと述べています。
日本にはキャリコンコンサルティングというと大卒やエリート層しか関係ないと思われる人がいる雰囲気があるような気がします。
もちろんこのような恵まれた環境にいる人たちををキャリアコンサルティングするのもキャリアコンサルタントの仕事です。
コロナの影響で雇用問題が悪化して、パニックに陥り、自分の仕事の方向性を見失うクライアントも出てくるでしょう。
そのような状況にある時、キャリアコンサルタントは、ブルースティンの「忘れられた半分の声」「ワーキング心理学」の考え方を意識する必要がると思います。
このような社会正義のキャリアコンサルティングの考え方が、現在、アメリカ、世界で最も受け入れられているとは興味深いです。
参考文献:「社会正義のキャリア支援」図書文化社・下村英雄著
◆『「キャリアコンサルタント」で自立する方法 国も推奨!今、最も注目の国家資格』(合同フォレスト)
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