こんにちは。カリエーレ・コンサルタンツ( 愛知労働局・訓練受講希望者等に対するジョブ・カード作成支援推進事業責任者)佐渡治彦です。
キャリア支援を理論的にご指導頂いている独立行政法人労働政策研究・研修機構キャリア支援部門主任研究員 下村英雄氏が「社会正義のキャリア支援:個人の支援から個を取り巻く社会に広がる支援へ」を図書文化社より上梓されました。
下村氏には、今春、出版予定の拙著にもご指導頂いております。
世界の潮流である「社会正義のキャリア支援」。
日本でも徐々に浸透していますが、今回の下村氏の著書は、日本のキャリアコンサルタント業界のみならず、社会にも一石を投じる読みごたえのある作品です。
「認識おいて悲観的、行動において楽観的」というサルタナの社会正義のキャリア支援のキャッチフレーズが印象的です。
キャリアコンサルタントならずとも、読んでみる価値があります。
【レビュー】
著者は、日本のキャリア研究の第一人者です。
現在、世界のキャリア支援論の潮流は「社会正義」というキーワードです。
しかし、日本ではまだまだ、一般化していません。4年前に国家資格となった「キャリアコンサルタント」も、知る人は知るという資格ではないでしょうか。
この本は、まさにキャリアコンサルタント、これから資格を目指す人、また、資格を持たない人にも是非、読んでいただきたい1冊です。
世界、日本の格差社会、多文化社会の問題解決に役立つ本です。
現代は、ダイバーシティ、LGPT等、多様な文化、少数派の価値観を重視しなくてはならない時代になってきています。
下村氏は、このような時代、多文化キャリアカウンセリングの論理の根幹である、多様で多文化な個人の特徴や属性を尊重する面は重要であるが、この個人尊重、個人重視の論理では、個人を結びつけ、統合し、協力するという考え方は生まれてこないことが問題であると指摘します。
例えば、自分は男性でないから、自分は経済的に豊かでないからという他とは違う自分に着目し強調することにつながり、その結果、葛藤、対立が生じやすくなると。
それでは、どうすれば少数派の文化を尊重しつつ、かつ、個人個人をバラバラにしていくような発想にならないようにするかといえば、「少数派の周辺的な文化の尊重するという価値」を普遍的な価値、社会全体の理想、目標として掲げる考え方が、重要と論じています。
これこそが「社会正義」であります。
その上で、社会正義のキャリアカウンセリングの「実践」として、日本では(深い意味での)カウンセリング、エンパワメント、アドボカシーの3点を掲げています。
特にまだ日本では耳慣れなれない言葉ですが、アドボガシーが今後、日本でも重要なポイントになると思います。
キャリアカウンセリングというと個人との1対1の面談でし終わりがちですが、社会正義のキャリア支援には、キャリアコンサルタントが、会社、学校、行政等組織への環境介入の支援が重要なるでしょう。
相談者の「Voice」を傾聴し、キャリアコンサルタントが社会問題として個人の悩みを捉え、組織の制度、システムをより良い方向に変化させていくことが重要だと下村氏は論じています。
下村氏によれば、社会正義のキャリア支援には「スタンス」が重要だと言います。「
具体的に何をやるかという以前に、そういう実践を行う人はどうあるべきかが大事」である。「それほど目新しい実践があるわけでなく、それをどういうつもりでやるか、そこに大きな違いがある」と述べています。
社会正義のキャリア支援とは何か、欧州キャリアガイダンス論など分かりやすく、専門家でなくても読みやすく書かれています。
「日本のキャリアコンサルタントの父」木村周氏の愛弟子である下村氏の論理展開の源は、木村氏の掲げる「労働の人間化」(著書にも掲載)によるものが大きいと感じました。
この本は、まさに日本のキャリアコンサルタン正統派理論の、木村周氏の系譜を脈々と受け継げられている良書だと思います。
【愛知労働局】https://jsite.mhlw.go.jp/aichi-roudoukyoku/home.html
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