こんにちは。
カリエーレ・コンサルタンツ、キャリアコンサルタント佐渡治彦です。
私は世界最大シェアをもつドイツの制御盤(筐体)メーカーの日本法人で、営業をしていたことがあります。
制御盤とは、工場などでラインを制御する機器を収納する「鉄の箱」です。
服を収納するロッカーのような箱で、もっと大きくて頑丈な箱をイメージしてもらうとわかりやすいです。(小さな制御盤もあります)
この会社は世界約70国に現地法人を持っていて、制御盤の世界シェアが
約70%とグローバル企業です。このようなことを聞くと、日本でも当然、売れるのではないか?と思われるかもしれません。
しかし、日本市場ではなかなか苦労があり苦戦しました。
そもそも、欧米と日本では制御盤の設計思想が違うのです。
このドイツの会社の製品は、標準サイズの制御盤を大量生産してコストを下げています。
欧米の制御盤設計者は、あらかじめ決められたサイズの制御盤の中に、機器を収納していくという発想で、最初に制御盤、「鉄の箱」ありきで設計するのです。
ですので、欧米の設計者は制御盤に収納できるように機器を選ぶのです。一方、日本の制御盤設計者は、最初に必要な機器を選び、その上で、最後にこれら機器を収納できる制御盤を手作りで設計するのです。
つまり、洋服で言うと紳士服のアオキで吊り下げのスーツを使うのが欧米の設計者で、三越でオーダーメイドのスーツを使うのが、日本の制御盤の設計思想です。
もちろん、例外もありますが、このような欧米と日本の設計思想、考え方の違いがあります。
いわば「文化の違い」でもあります。
日本の設計者は、制御盤のサイズなど気にせずにそれに合う「鉄の箱」を最後に決めればいいという発想なので、ドイツ製のあらかじめ決められたサイズの「鉄の箱」に、機器が収納できなくなる可能性があります。
いくらドイツの高品質で、安価ですばらしい商品でも日本市場では、受け入れられにくいのです。ですので、日本市場でも海外進出する企業や外資系の企業には、このドイツ製の制御盤は採用されやすのですが、日本国内の工場に使用する国内企業には、なかなか、採用されませんでした。
ドイツ本社は、世界シェア70%ある製品がなぜ、日本市場で売れないかを再三再四、言ってきました。
営業としては、このような日本と欧米との「文化の違い」をドイツ本社にいくら説明をしても、納得しません。
なぜなら「世界シェア70%あり、高品質で安いから日本市場で売れないはずがない」という論理です。
ドイツ人特有の頑固さが、この会社でよくわかりました。このような「文化の違い」をドイツ本社に受け入れられない日本法人の営業は、このような環境でも、日本市場を開拓せよ!という命令に従わざるをえません。
ですので、営業の仕事として日本の制御盤設計者にいかに、ドイツ製制御盤のファンをつくるのかが、大命題になります。
そのために、ドイツまで招待して本社工場ラインを見学してもらったり、ボールペンなどの文房具などのグッズを配ったりしていました。過激な営業部長ですと「日本の設計者を洗脳せよ!」とまるで、どこかの宗教家のようなことも言って、営業を鼓舞させていました。
営業パーソンの腕の見せ所は、いかに日本人の設計者のドイツ製制御盤のファンを増やして、製品を選んでもらい図面にスペックインして採用されるところです。
最近、このドイツ製制御盤メーカーの営業時代のことを思い出していたら、今の、キャリアコンサルタントの営業にも通じると感じました。
なかなか、まだ、日本の企業ではキャリアコンサルタントを導入しようというとことが少ないです。
大企業では徐々に導入しているようですが、中小企業にはまだまだ浸透していません。
このような状況の中、キャリアコンサルティングの企業開拓をしていくには、いかにファンを増やすことだと思いました。
この点は、ドイツ製制御盤の日本市場開拓営業と通じると思います。ドイツ企業で営業の経験が、キャリアコンサルタントの営業でも活かされるのではないかと思った瞬間です。
ファンを増して売上UP は、どの業界の営業パーソンにも共通な課題かもしれませんね。
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